雅(みやび)な佇まいで失礼します。あんちゃです。
実は最近、雅楽をはじめまして。
前回の記事:「続けること」の尊さについて
なんでいきなりそうなったかというと・・・
わたしが現在バリスタをしている大阪のコーヒー屋「シロフクコーヒー」を運営する会社(グレイトティーチャー株式会社:みんなから「GT」という愛称でよばれている。)では、
日本が古来から大事にしている精神性とか、文化伝統を、ちゃんと次の世代にも受け継いでいくために、飲食店を中心に事業を展開しているんですが。
毎年、スタッフと、お客さんも一緒に、日本各地の神社にお参りしているんですね。
で、その神社参りの一環で、日本の歴史や神社のことを学ぶセミナーなんかもやってるわけなんですが、なんとそこで、雅楽演奏もすることになりまして。
わたしを含めスタッフ8名で結成されたのですが、全員ど素人で、楽器の音すら鳴らない状態からのスタートでした。(普段は飲食やデザイナーなどやってる普通のスタッフたちなのでw)
これはどうしたもんか・・・
やはり、先人に習うしかない・・・
どこかに、レッスンができて、しかも雅楽で使用する楽器が全部吹けて、ついでに大阪まで出張に来てくれる、面白い先生はいないだろうか・・・
いた〜〜〜〜〜〜〜!!!!
ということで、
今回は、現在お稽古でヒジョーにお世話になっている雅楽演奏家/講師の山口創一郎先生に、突撃取材しました┗(^o^ )┓三
(ちなみに、まさかのあんちゃと同い年です。山口先生、老け顔・・・ではなくさすが貫禄がありますね!!!)
*プロフィール*
雅楽演奏家・講師。
小学4年生から雅楽を始め、現在は関西を中心に活動を展開。
担当楽器は、龍笛・笙・篳篥・箏・打物・左舞など多岐に渡る。
- YouTube:山口創一郎の「YouTube雅楽教室」
- Web:山口創一郎公式サイト
「演奏家」として食っていく覚悟
現在は雅楽の演奏家・講師として活動する山口先生。
雅楽一本で食っていく覚悟は、いつ芽生えたのでしょうか。
山口:もともと父親も雅楽をやってたので、ぼくも小4から楽器を吹くようになって、大学入るまで続けていたんですよね。ただ、そこから数年雅楽を離れて、大学生活送ってたんですが・・・ふと、「今ここで人生が終わったら、何も残らないな」と思ったんです。
あんちゃ:急に悟りましたね(笑)
山口:で、「やっぱりぼくには雅楽しかないな」と思って、大学4年のときにまた雅楽を始めて。いざ卒業が近づいたときに、「具体的に何をどうすればいいかわからんけど、雅楽を仕事にしよう!」と、誰にも言わずにそっと決心しました(笑)
あんちゃ:誰にも言わんかったんすねw
山口:とはいえ、いきなり食っていくには無知すぎたので、大学近くで一旦法人勤務をして、その合間に演奏の練習を続けていましたね。
あんちゃ:なるほど。その後に独立したんですか?
山口:結局4年勤務して、「このまま続けるのは違うな」と思い、特に先の見通しも考えないまま退職を決意し、結果、難民になりました。笑
あんちゃ:あれ?わたしの5年前と同じだな?
※あんちゃも見通し立てずに会社辞めてブロガーになったタイプの人間
山口:実は周りに雅楽で食っている人もほぼいなくて、これをどう仕事にするのかって、全くイメージできてなかったんですよね。
でも、何もしないのはさすがに野垂れ死ぬので(笑)、雅楽も続けられるように、地元のビジネスホテルの深夜勤務で働くようになりました。
あんちゃ:いろいろ葛藤していたんですねぇ
山口:で、ある日たまたまFacebookを見ていたら、ぼくと同じ高校出身の雅楽演奏家の方を見つけたまして。直接面識は無かったんですが、思い切ってメッセージを送ってみたところ、快く返信してくれて。そこからよく練習に呼んでもらったり、演奏会にもご一緒させてもらうようになったんですよね。
あんちゃ:おお!転機となる出会いが!でも、深夜がっつり働いて、日中雅楽の演奏や練習に行くって、結構ハードでは・・・
山口:まぁ、夜勤明けで寝ずにそのまま演奏会に出たりレッスンをしてましたね(笑)
あんちゃ:やはり、誰しもふんばる時期があるのですな・・・なぜ、そこまで頑張れたのでしょうか・・・?
山口:ん〜、やっぱり演奏の機会をいただくありがたみもありましたし、やったらやった分だけ、また新たなご縁ができたり、勉強になったり、自分の糧になる部分が大いにあったから、ってのはありますね。
あんちゃ:わたしも、会社員しながらブログ毎日書いてた時期は、ほとんど睡眠時間取れてなかったですが、毎日の積み重ねが着実に身についていくことの楽しさを感じてましたね〜
山口:そうなんです。まぁただその後、海外公演やレッスンが増えたときに、さすがに体が持たないなとなって、夜勤はやめることにしました。まだ雅楽一本で食っていける状態ではなかったので、バイトをしながら続けましたね。
あんちゃ:不安はありましたか??
山口:僕の場合は、正社員だったところからフリーターになったときは、少し周囲に対して負い目を感じたこともありましたが、まぁでも、雅楽とバイトで二足のわらじだったら、なんとかやっていけるだろうな、と基本的には前向きに考えてました。
あんちゃ:わたしもブログで収益出なくて貯金が尽きたら、バイトと掛け持ちして続けようと思ってましたw
山口:そこから雅楽は本格的に動き出して、年間150本の演奏会をしたり、自分でも演奏会を主催するようになりましたね。
あんちゃ:150本!??!1年の半分近く演奏会してるww
山口:一時は、あまりに忙しくてまともに練習ができず、苦肉の策で、車で移動中に、車内で楽器の練習してました(笑)
あんちゃ:つめこむなぁ〜
いざ独立!!と思いきや・・・
あんちゃ:じゃあ、そこから満を侍して、独立したわけですね!!(ワクワク)
山口:そうですね。バイトをいよいよ辞めて、雅楽一本でやっていこう!と、その道を歩んだ、その瞬間・・・
あんちゃ:おっ?(不穏な空気??)
山口:コロナが・・・・・・
あんちゃ:アッーーーーーーーーーー!
山口:順風満帆でやっていこうと思ってた矢先、まさか演奏会が軒並みキャンセルになるなんて、誰が想像できたでしょう・・・(泣)
あんちゃ:そうか、ちょうど昨年の春くらいの独立だったんですね・・・
山口:2020年の4月頭にフリーランスになった途端、緊急事態宣言が出ましたね。一瞬で仕事が無くなりました(笑)
あんちゃ:そ、それはどう打開したのでしょう・・・!
山口:幸いにも、独立するちょっと前からYouTubeを始めてて。もうこれにすがるしかないと思って、動画を撮って、撮って、撮りまくりました。
あんちゃ:YouTubeでの動画配信は、自分でコツコツ調べながら始めたんですか?
山口:そうですね。やり方を調べる中で「あ、スマホで撮れるんだ!」ってのがわかって。マイクや照明を揃えたりして、見よう見まねで必死に配信しました(笑)2ヶ月後には、動画200本くらい上げてましたね
あんちゃ:1日3本配信wwえぐいww情報発信でメシ食ってる私より断然更新しておるww
山口:それでも、月の売り上げは3〜4万しかなく、貯金を切り崩しながらやりくりしてたんで、この時期が一番精神的にもキツかったかもしれません。
あんちゃ:先が見えない不安って、ジワジワメンタルにきますよねぇ、、
山口:来る日も来る日も、ひたすらYouTubeを撮り続けて1日終わってましたからね・・・雅楽というニッチなジャンルなんで、爆発的にチャンネル登録が増えるわけでもないし、こんな発信でほんとに仕事が来るのだろうか、、と。
あんちゃ:別の道を考えようとは思わなかったですか?
山口:最悪、ほんとにヤバくなったらまたバイトとのかけもちにしようと思ってました。が、貯金が尽きるまではなんとか踏ん張ってみようかと(笑)
あんちゃ:たしかに、うまくいかなかったときの最悪の状態を想定しておくと、ガツガツチャレンジしていけますね。この恵まれた日本で、時折失敗しても、死ぬわけじゃないですし。わたしも全く同じ思いで独立しました。
山口:そこから、一旦緊急事態宣言が明けたときに、急にYouTubeから問い合わせが増えるようになって。レッスンの申し込みや、演奏会も再開したり、徐々に活発になっていきました。
あんちゃ:おお・・・動画200本が報われはじめたんですね・・・ちなみにわたしたちも、山口先生を発見したのはYouTubeが最初でした!
山口:雅楽でがっつり発信している方って、なかなかいないですもんね。
あんちゃ:というか、ほぼ山口先生だけだったと思います(笑)。しかも親切に解説されてる動画ってほとんど無かったんで、「もうこの人しかいない!」ってなりました。しかも!雅楽で使うほとんどの楽器を吹ける人ってマジでレアだなと!!
山口:僕ももともと一つの楽器だけやってたんですが、演奏会で人が足りない時とかに「あれもやってみたら?」「これもできないかな?」と、周りの要望に応え続けていたら、いつの間にか他の楽器も演奏するようになってました(笑)
あんちゃ:うぁ〜〜めちゃくちゃ大事ですね。周りの人から言ってもらったことにノリよく乗っかるの。自分では決して選択しなかった道が、新しく拓けることって大いにありますもんね。
50歳で演奏家をやめる・・・!?
あんちゃ:ちなみに、今後の展望として考えてることってありますか?
山口:僕、50歳くらいで演奏家やめようと思ってるんです。
あんちゃ:えっ!?そうなの!?!WHY!?
山口:雅楽って、どうしても年配の方が圧倒的に多いんですね。80〜90歳まで現役でやる人も少なくない。だからどうしても、若手の出番が少なくなっちゃうんです。なので、僕は50歳くらいになったら第一線を退いて、次世代へ舞台を譲りたいなと。
あんちゃ:ほぉ〜〜〜〜じゃぁ、そこからは次の世代をサポートする側に回る、と。
山口:ですね。講師として教えたり、演奏会を企画したり、もっと若い世代が活躍できる環境を整えていきたいですね。
あんちゃ:大事っすねぇそれ。日本の伝統や文化って、その精神を継ぐ人がいなくて廃れてしまうものが本当に多いと思います。雅楽も、若い人が触れる機会ってほんと少ない。もっと、末長く受け継がれるようにしていきたいですね。
山口:雅楽は本当に奥が深くて、同じ楽器でも、作る職人さんによって全く音色が違ったり、吹く人でも変わります。その人の「人となり」が音に表れると言いますか・・・
あんちゃ:たしかに!わたしも実際にやってて感じましたが、大雑把な人はめっちゃ音出るけど荒々しかったり、繊細な人はきれいな音色だけど、弱々しく聞こえてしまったり・・・ちなみに私は後者です(笑)
山口:ほんとわかりやすいですよね。でもその異なる音たちが、ピタッと調和する瞬間に、なにか通じ合ったような、演奏する全員が繋がるような感覚が、すごく心地良く、楽しいですよね。
あんちゃ:わかります・・・最初全然みんな合わなくて、協調性なさすぎてどうなるかと思いましたが(笑)、少しずつ音が溶け合うたびに、心の距離も近づく感じがして、純粋に嬉しいなと思いました。この面白さ、若い人にも知ってもらいたい〜〜!
山口:がんばります!!笑
あんちゃ:わたしたちも引き続きガツガツ練習していきますので、ご指導よろしくお願いします!!
これまで、いろんなジャンルで独立したり、起業したりする人を見てきましたが、
やっぱり誰もが精神的に苦しい時期や、踏ん張らないといけないタイミングを乗り越えてきているなと思います。
でも、はたから見れば苦しいと思うけれど、本人からしてみたらそんなことなくて。
というか、苦しいとか苦しくないとか以前に「つべこべ言わずにやらなアカン」って感じで、無心で目の前のことに挑戦してきた人ばかりなんですよね。
山口先生も、コロナという障壁をむしろチャンスとして捉えて、ひたすら発信活動をしたからこそ、それが後になって活きたんじゃないかなぁと思います。
けれど、山口先生の選択は極めて現実的だし、無鉄砲に独立したわけでもない。
たしかに最後は賭けのような気持ちで独立をしたのかもしれませんが、最初のうちは二足のわらじを経験して、少しずつ雅楽で食っていくための土壌を築かれたのだと思います。
世の中にはいきなり起業してうまくいく人もいますが、山口先生のように、二足のわらじを続けながら、少しずつ力をつけて、自分なりの道を作っていくのも、素敵なことですね٩( ‘ω’ )و
今回は、なかなかみなさんが出会うことのない珍しいお仕事の人に取材できたんじゃないかなと思います。
山口先生、ありがとうございました!
>おまけ
写真撮影:我が雅楽チームの取りまとめ役・たろうくん(普段はWEBデザイナー)