誰も教えてくれなかった日本人の原点。小名木善行×あんちゃ対談

 

 

「日本という国はなぜ作られたの?」

「日本人は、何を大切にしている民族なの?」

 

シンプルなこの問いに答えられるのは、大人でも少ないかもしれません。

 

けれども、諸外国では、これらは当たり前に学校教育の中で習い、誰もが母国に誇りを持って答えられるのが、世界のスタンダードです。

 

なぜ、日本人だけ答えられないのか。

その理由と、もっとも根本的な「日本人の原点」について、国史啓蒙家・小名木善行先生にお話しを伺いました。

 

 

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●プロフィール

小名木善行(おなぎぜんこう)

昭和31年生まれ。浜松市出身。上場信販会社を経て、現在は執筆活動を中心に、私塾である「倭塾」を運営。またインターネット上でブログ「ねずさんの学ぼう日本」を毎日配信。古事記・日本書紀・万葉集などの原文を丁寧に読み解き、誰にでも納得できる日本論を発信。

《著書》日本図書館協会推薦『ねずさんの日本の心で読み解く百人一首』、『ねずさんと語る古事記1~3巻』、『ねずさんの奇跡の国 日本がわかる万葉集』、『ねずさんの世界に誇る覚醒と繁栄を解く日本書紀』、『ねずさんの知っておきたい日本のすごい秘密』、『日本建国史』、その他執筆多数。

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「建国」の理由を知らない日本人

 

あんちゃ:わたしたちって、「そもそも、なぜ歴史を学ぶ必要があるのか?」とか、「日本という国はなんで作られたの?」とか、そういう根源的な部分がすっぽり抜け落ちているなと思うんですね。学校でも教わらないですし。

「建国記念日」の祝日があるのは知ってるけど、建国の理由は知らない・・・みたいな。
そういう「日本人の原点」って、どんな人も知っておかなきゃいけないけど、その必要性にすら気づけない、というのが現状だと思います。

 

 

小名木:世界には、国連加盟国だけでも200ヵ国近くありますが、その中で、「建国の歴史」を教えていない国って、ほぼ無いんですよね。「なぜわたしたちは、ここでこういう国を作って、国民となったのか」という原点が、必ず教えられるんです。

しかし、世界で唯一、建国の理念を教えられてないのが、日本です。

 

 

あんちゃ:ええええ( ゚д゚)ソンナバカナ・・・

 

 

小名木:これは非常に残念なことです。日本の建国理念が、仮に悪いことをして、侵略してできたものだったら、「黙っておこう」ってなるのかもしれませんが(笑)、実際に建国の歴史を調べてみると全く違います。

かつての日本は、自然災害も多く、食糧を作るのも一苦労でしたから、みんなで持ち寄っていました。冷蔵庫なんて当然ないので、常温で保存できる「お米」をみんなで作って、少しずつ持ち寄って、気象条件の良いところに「米蔵」をつくって保存し、凶作だった地域に、それを配る・・・。

そうやって、日本の全国民が、みんなで助け合って暮らしていこう・・・というのが、初代天皇・神武天皇の「建国の詔(みことのり)」に書いてあるんです。

 

 

あんちゃ:めっちゃいい話じゃないですか・・・なんで教えないの?!って感じですね。。

 

 

小名木:それを漢字四文字で表すと「八紘一宇(はっこういちう)」と書きます。

〝八紘〟は、四方八方(=日本全国のこと)。〝一宇〟は一つ屋根の下、という意味です。

すべての国民が、ひとつ屋根の下に暮らす”家族”となる。家族ならば、誰かがお腹を空かせていたら、食べ物を分けてあげるのは当然ですから、そうやって支え合いましょうね、ということです。

 

 

あんちゃ:八紘一宇。いい言葉ですね。

 

 

小名木:英語では、「国」を「Nation State 」と呼びますが、日本では「国家」=「Nation Home」と呼ぶんですね。
そういう些細な表現に、日本人の国に対する思いが表れているのです。

 

 

あんちゃ:おお・・・「国家」の意味、考えたこともなかったです・・・!

 

 

小名木:「建国の詔」の原文は難しい漢字が綴られていますから、誤った読み方をしてしまうことも多いんですよね。

古事記も、日本神話も、間違った訳し方をされたものが世に出回り、さらに別の解釈が加えられ、それが常識となってしまっています。だから私は、もう一度原点に戻って、原文を適切に読み解いて伝えていきたいと思っています。

 

 

日本人が守り続けてきた価値観

 

あんちゃ:「八紘一宇」という言葉にも表れるように、本来日本人は、誰かがモノを占領したりとか、奪ったりすることなく、みんなで共存していく精神が根底にあるんじゃないかと思います。そういう”調和の精神”って、本当は誰もが持っているはずなのに、今は全くそこが教育されていないなと。

聖徳太子の時代から、十七条憲法の一番最初に「和を以って貴しと為す*」と定めていたというのも、小名木先生から聞いて初めて知ったことです。

*「調和を重んじよ」という意味

 

 

小名木:そうですね。十七条憲法第一条には、このような記載があります。

和を以て貴しと為し、忤(さか)ふこと無きを宗とせよ。
(中略)
然れども、上和(かみやわら)ぎ下睦(しもむつ)びて、事を論(あげつら)うに諧(かな)うときは、すなわち事理おのずから通ず。何事か成らざらん。

なぜ調和を重んじるのか。それは、大事なことはみなで「あげつらう=議論して決める」からだということです。

よく、「日本人は調和を大事にするから、議論するのを嫌うんだ」という人もいますが、それは全く逆の考え方なんですね。

 

 

あんちゃ:なるほど。現代人は、むしろ調和というより、同調圧力に負けて議論しなくなるという点はあるかもしれませんが・・・(笑)

 

 

小名木:そして、「忤ふ」というのは「人を恨むことをしてはならないよ」ということです。忌憚なく議論を交わすのは大事だけど、人格攻撃はしてはいけない、というのを、第一条に宣言しているわけです。

 

 

あんちゃ:確かに、なにか目的があって議論しているのに、人格攻撃が始まったら、論点がずれちゃいますもんね。第一条にこれが書かれているということは、これが大前提だということなんだろうなぁ。

 

 

小名木:で、最後の第十七条になんと書いてあるかというと・・・

夫れ事独り断むべからず。必ず衆(もろもろ)とともに宜しく論(あげつら)ふべし。(以下省略)

大事なことはひとりで判断せず、みんなで話し合って決めるべし、と、改めて書かれているんですね。

 

 

あんちゃ:ほぉ〜〜・・・。十七条憲法自体は、学校で習うかもしれませんが、聖徳太子が伝えたかった肝心な部分が、全く教えられていなかったですね。。

 

 

小名木:歴史を知れば知るほど、日本人は昔から、誠実に、みんなで支え合って生きてきたことがわかります。

それによってどういう文化ができあがったかというと、「みなで協力し合いながらも、責任は自分自身で感じる」というものです。

権力を持つ者は、それに伴う責任がある。その責任というものは、人から言われて生じるものではなくて、自らがその重みを感じるという思想が定着するようになりました。

 

 

あんちゃ:調和のとれた議論を交わすにも、各々が発言と行動に責任をもって振る舞うことが必要だということですね。

 

 

小名木:実は日本は、701年に大宝律令ができて、その後明治時代に刑法が作られるまで、約1200年あまり、刑法がありませんでした。世界で唯一刑法がない国だったんです。

それは、明文化するよりも、国民ひとりひとりの意識の中に「罪を犯してはいけない」「誰かのモノを奪ってはいけない」という文化を根付かせることが大事だったからです。

 

 

あんちゃ:ルールを決めなくとも、一人ひとりが「人として、何をしてはいけないのか」がわかっていたということですね。それは、高い精神性を持ってなければなかなかできないことですね。確かに、江戸時代はすごく平和で、罪を犯す人も少なかったと聞きます。

 

小名木:刑法を明文化すると、ある意味「法律に書いてなければ、あとは何をやったっていい」「罪を犯したって、バレなきゃいい」という考えも同時に生まれかねないですからね。

 

あんちゃ:なるほど。形にすることで、精神性が下がってしまう側面もあると。

 

小名木:明治期に入ってから、ヨーロッパの法制度を真似て刑法を作りましたが、一見先進的な文化を取りいれたように見えて、別の側面では、昔の日本よりも、精神性としては廃れてしまった部分も多くあるということです。

もちろん、物事の見方というのは、いろんな解釈ができるわけですから、進んだ文明文化を取り入れたことで恩恵を受けることもあれば、日本の良さが逆に失われてしまった面もあるのです。

 

 

あんちゃ:西洋文化を取り入れるとは、良いことだけではなく、その裏で私たちは何を失ったのか?にも目を向けないといけないですね。

 

 

日本人の仕事観

 

あんちゃ:最後に小名木先生にお聞きしたいのですが・・・

今の若い人たちって、働くことに対してネガティブなイメージが根付いているというか・・お金のため、生活のために「やらなくてはいけないもの」という意識が強いなと感じます。私も、元々はそうでした。

けれど、本来の日本人の仕事観って、もっと喜ばしいものだったんじゃないかなと思うんです。

 

 

小名木:昔、とあるヨーロッパ人が日本に来たときに書き残した言葉があります。

彼は、ある日本の庭職人を見て「彼らはとても幸せそうだ」と記したそうです。

日本の職人は、自分で納得するまで、とことん突き詰めていく。本人が完成したと思うまで、ずっとその現場で精度を高め続けていく。その追求する心が、日本人は強かったんですね。

ところが、海外の場合は「時給」という概念があって、「1時間でこれだけの仕事をしたらこれだけの報酬をもらう」という意識が強いので、日本の仕事観とは異なるわけです。

 

 

あんちゃ:どちらの働き方にも良い面はあると思いますが、今の日本人の働き方は、ある意味、西洋の仕事観の悪い部分が出てるなと思います。。報酬以上の働きはしない、自分で仕事を”作る”という意識なく、上から言われたことをただこなす・・・みたいな。

昔の日本人の「仕事」は、もっと創造的だったんですね。

 

 

小名木:どんな仕事をするにしても、「こうしたらどうかな?」「こうすればもっと喜ばれるかな?」という工夫する心がなければ、途端に面白くなくなります。

自分でできる精一杯を尽くす。もちろんうまくいかないこともあります。むしろ失敗の方が多いかもしれない。でも、だからこそ挑戦し続けられるじゃないですか。

 

 

あんちゃ:最初から、今の自分ができる範囲のことしかやらなかったら、なんの進歩も発展も無いですもんね。

頑張ったけどうまくいかなくて、でもその失敗の中に次のアイデアがあって・・・そういう模索する過程に、仕事の醍醐味があると思います。

 

 

小名木:そもそも人生なんて、博打みたいなもんで、勝つか負けるかわからない。だから面白い。だから必死で、今目の前のことをやるんです。

そうやってひたむきにやっていたら、いつか周りの人から「ありがとう」と言われるようになる。意外と、「人から感謝される仕事」をするのって、難しいですよ。

カミさんからですら、「ありがとう」なんて、めったに言われることなんてないですから(笑)

 

 

あんちゃ:手厳しい(笑)

 

 

 

ーーー古来から続く日本の文化と伝統は、いまもわたしたちの生活の中に根付いているものもあれば、廃れてしまうものもあります。

先進的な科学技術によって恩恵を受ける裏側で、目に見えない誇り高き精神性や先人たちが受け継いできた思いが、知らず知らず失われていく。

 

この先、いつの間にか本当に大事なもの、守るべきものを見失ってしまわぬように、小名木先生が伝えられている話は、忘れてはならないものだと思います。

だからこそ、今この時代に歴史を学ぶ価値がある。

 

わたしも、発信者のひとりとして、日本人の原点を伝え続けていきたいなと思います。

 

小名木先生、ありがとうございました!

 

 

▼小名木先生のインタビュー記事【前編】はこちら

>> 歴史とは、批評するものではなく学ぶもの。国史啓蒙家・小名木善行(ねずさん)インタビュー

 

 

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執筆屋あんちゃ
執筆屋です。意識高い人生哲学から下ネタまで幅広く。 大阪の珈琲屋「シロフクコーヒー」のバリスタ▶︎系列店「ゆにわマートオンライン」に最近異動しました。最近はよくインスタにいます。

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